こんにちは。

北陸、富山の社会保険労務士の渋谷恵美です。
特に従業員の育児と仕事との両立支援をサポートするため企業づくり、従業員が成長する環境づくりのお手伝いを得意としております。

育児をするパパママの多くが悩む「働き方」。
育休から復帰する時、短時間勤務が終了となるとき、子どもが小学校に上がるとき・・・
フルタイムで働くことが難しく感じ、短時間パートへと変更されるパパママもいらっしゃるように思います。

今回は、短時間勤務になった場合の雇用保険の取扱いについてお話をしたいと思います。

時間によっては雇用保険からの喪失が必要?

雇用保険の加入要件の1つに

1週間の所定労働時間が 20 時間以上であること

というものがあります。
逆を言えば、1週間に20時間以上働かない契約、
例えば「週5勤務、1日3時間」だったり「週3勤務、1日6時間」となっている場合は
雇用保険の加入要件には該当しないということになります。



退職しないのに雇用保険から脱退させる・・・というのは少し違和感があるかもしれませんが原則はこのようになっています。
ちなみにその場合、雇用保険の喪失届をハローワークに提出することになりますが、その際は
「喪失原因」の欄に「1(離職以外の理由)」と記載してください。

↑1と記載ください!

でも一方でこんなお悩みがあるのも事実なんです…

このような悩みを持つ従業員にはどのように対応してあげればいいのでしょうか?

雇用保険の取扱いの特例

厚生労働省が出している「 雇用保険に関する業務取扱要領 」の中にはこのような文言が登場します。

子の養育のために、休業又は勤務時間を短縮した場合について、その子が小学校就学の始期に達するまでに1週間の所定労働時間が20時間以上となる労働条件に復帰することが前提であることが就業規則等の書面により確認できる場合には、当該措置を一時的なものとして取り扱い、最長でその子が小学校就学式に達するまでに被保険者資格を喪失させず、被保険者資格を継続させる。

…国の文章って難しいですよね。
私なりに要約するとこんな感じです。

パパママが育児のために勤務時間を減らす場合で会社と相談したところ、週に働く時間が20時間未満になってしまった!
 ↓
でも子どもが小学校に入学する頃には週20時間以上の勤務に復帰する予定なんです。
 ↓
それなら会社は雇用保険の喪失をさせなくてもいいよ!
 ↓
でもちゃんと就業規則とか書面に残しといてね

ちなみに就業規則の規定例としては、

「1週間の所定労働時間が20時間以上のパート社員は、雇用保険に加入するものとする。
 また、 小学校就学の始期に達するまでの子を養育するパート社員が、子の養育のために休業又は勤務時間を短縮させ所定労働時間が20時間未満となった場合でも、その子が小学校就学の始期に達するまでに1週間の所定労働時間が20時間以上となる労働条件に復帰することが前提であれば、その者の申し出により雇用保険からは喪失させない」

といった感じでしょうか?

もしこのような取り扱いを会社でしてあげることが可能であれば、先ほどのような従業員の悩みや希望にもより沿ってあげられるように感じます。

パパママを雇用保険に加入させたままでいることのメリット

そのようにお考えになられる会社もあるかと思います。

ですが、パパママを雇用保険にかけたままにすることは、以下のようなメリットもあるんです!

①パパママに希望に沿うことで離職の防止にもつながる

→雇用保険に入りたいという希望があるのであれば「じゃあ雇用保険に加入できて、自分の働き方にもあった会社に転職しよう!」という考えになることも予想できますよね。
パパママが働けないのが一時的なことで、育児が落ち着いたら勤務時間も大幅にアップされることもあるかと思いますが、その時に若手を使うよりも、このパパママを活用した方が生産性のアップにもつながるかもしれません。
また、代替要因を用意するには採用コストも教育コストもかかります。
それから見ても、慣れた人材を今は細く活用した方が結果的には安く収まるかもしれません。

②「柔軟に働ける会社」が今後のトレンドに

→近年「ワークライフバランス」や「週休3日」などといったように、プライベートを重視する働き方が支持されてきています。
また、男性育休の充実など、国も様々な策を講じる中、特に若い方を中心に今後ますます育児と仕事のバランスや働き方についての考え方が大きく変化していくと感じます。
そうなると、やはり育児にやさしい会社が当たり前、そのような会社に人気が集中することは容易に想像できるところであるかなと思います。
その取り組みの1つとして、実施してみるのはいかがでしょう。

③雇用保険料って、高くない⁉

→社会保険料の会社負担分はざっくり総支給額の14~15%程度。
例えば月収15万の方であれば月々の負担は2万強、年にすると25万強ほどです。
これって高い気がしますよね。
一方で雇用保険料の会社負担分はざっくり総支給額の0.6~0.8%。
月収15万の方であれば月々の負担は900~1,200円、年にすると1万円強~1.5万円弱。
「あれ、思ったよりも高くない?」と感じた方も多いのではないのでしょうか。 
この金額でメリットが受けられるのであれば、お得なのかもしれませんよね。

④助成金の対象になる

→雇用に関する助成金の多くは、その取り組みをする対象労働者が「雇用保険の被保険者に限る」とされています。
パパママの雇用保険を喪失させてしまうと、雇用保険の被保険者にはなれません。
つまり、助成金の対象労働者にはなれないことも多いんです。

いかがでしたでしょうか?
今後パパママからこのような相談が出た際には1つの参考にしていただけると幸いです。
また、弊所でも相談にはいつでも乗らせていただけますので、お困りの際にはご連絡ください!